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平和への希求。「吉坂隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」@東京都現代美術館

 東京都現代美術館で開催中の「吉坂隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」に行ってきた。

 

www.mot-art-museum.jp

 

吉坂正隆という建築家について、全くと言っていいくらい知識がないまま見に行ったのだけど、結果としては、遠路はるばる観に行った甲斐があった。

 

展示の内容は予想に反して、吉坂先生の建築作品自体というよりは、吉坂先生の思想にフォーカスした内容だった。

 

東京都現代美術館が意図したのかどうなのかはともかく、吉坂先生は「平和」に対する希求が強い建築家だったらしい。

そういう平和への願いが、思想や建築にも反映されているようだった。

吉坂先生は第二次世界大戦を経験している年代なので、平和というものが現代の我々以上に、切実な問題だったんだろう。

そして、ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにしている今だからこそ、観るべき展示だと思ったし、観る意義があると思った。

 

吉坂先生の考えとして、争いの原因は相互理解の不足(←正確に覚えていないので、間違っていたらすみません)、というところが一番印象的だった。

しかし、相互理解のためには、理解しようとする気持ちがないと始まらない。

現代は、その理解しようとするモチベーションが欠如してしまっているかもしれないなと、ふと思った。

結果だけを見て、「けしからん!」「こんなのはだめだ!」となって、すぐさま炎上!みたいなことになるのは、相手への理解の不足が原因かもしれない。

 

相手のことを理解するって、本当に難しい。

だからこそ、その努力を怠ってはいけないんだよなぁと、展示を見ながらしみじみ思った。

吉坂先生も、世界中を旅して、歩いて、いろんな文化や風土を身を以て体感しておられた。

そういう自分が知らないことを知ろうとする努力を生涯通して行っていて、私も少しは見習いたいと、切実に思った。(足元にも及ばないけれど)

隣国・韓国の民家研究を積極的に行っていたのも印象的。

今、政治的には韓国との関係が冷え切っているけれど、文化的には似通っている国であって、しかもこんなに近いところにある国と関係が悪いというのは、なんとも悲しい。

 

展示の内容から、吉坂先生の「人間の営みに対する深い愛情」みたいなものを感じられて、そして、その愛情は日本だけではなく、世界の人々にも等しく向けられているようだった。

 

展示を見ながら、始終、建築とは関係ないことばかり考えていた気がする。

 

展示では、吉坂先生の思想の一端しか知ることができなかったのだけど、それでも共感する部分が結構あって、吉坂先生の著書を読んでみたいと思った。

 

とても良い展示だったので、興味のある方はぜひ。

建築に興味がない人でも、楽しく鑑賞できると思いました。

www.mot-art-museum.jp

同時開催の「TCAA受賞記念展」、「光みつる庭展」もすごく良かったので、こちらもぜひ。

吉坂展のチケットがあれば、無料で見れました。