最近読んで良かったと思った本(2022年5月)
5月に読んだ本リスト
ハ・ワン あやうく一生懸命生きるところだった
内藤昌 江戸の町(上)
林望 「芸術力」の磨きかた
原田マハ・高橋瑞木 現代アートをたのしむ
関谷真一 世界で一番やさしい木造住宅
三島由紀夫 女神
岡本裕一朗 いま世界の哲学者が考えていること
小崎哲哉 現代アートを殺さないために ソフトな恐怖政治と表現の自由
梅原猛 日常の思想
氷室冴子 なんて素敵にジャパネスク1〜10
安宅和人 シン・ニホン
印象に残った本。
紹介したい本ばかりだけど、特に面白かったのがこの5冊。
「現代アートをたのしむ」は、現代アートの楽しみ方の指南書的な感じで、面白い。
初心者向けに書かれている本なんだけど、アート用語がじゃんじゃん出てくるので、そこらへんは容赦ないです。
原田マハさんと高橋瑞木さんの共著なので、それぞれが書かれている部分と、対談部分で分かれていた。
対談部分では、アートが好きになったきっかけなど、個人的なエピソードなんかも書かれていて、ちょっと親近感を覚えたのはここだけの話(笑)
いま知っておきたいアーティストリストや、行ってほしい美術館がリストアップされていたのも、初心者としては嬉しいところ。
リストに上がっていた「広島市現代美術館」「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」はぜひとも行ってみたい。
猪熊弦一郎現代美術館は、建築的にも面白そうだったので、一度でいいから行ってみたいなぁ。
谷口吉生設計のようです。
こちらに詳しく感想書いてます。
「いま世界の哲学者が考えていること」は、哲学者の目を通してみた現代、という視点で書かれていて、興味深かった。
AI、バイオテクノロジー、資本主義、環境問題、宗教などについて、哲学者がどのように考えているのか、を知る入門書として良かった。
哲学を知りたい!と思うことが周期的に来るのだけど、哲学書って私には本当に難しくて、断念すること数回・・・。
哲学がどうこうという以前に文章が難解すぎて理解できない・・・(泣)
なもんで、わかりやすい文章で解説してくれている本書は本当にありがたかった。
しかも、それが現代の問題とリンクして書かれているので、実感として理解しやすかった。
特に資本主義については、ここ最近自分でも懐疑的になっていたところだったので、哲学者の意見を知ることができたのは、よいタイミングだった。
こちらの記事に、詳しく感想を書いてます。
「日常の思想」は哲学つながりで読んだ本。
物々しいタイトルだけど、エッセイ感覚で読める哲学本だった。
こういう本から読めばよかったのだ。
哲学書に苦手意識のある方に、ぜひ手にとってもらいたい。
この本を読んで、禅思想、仏教思想、そして中国文化なんかを学びたいと思った。
そこらへんを理解しないと、日本文化を理解するのは無理そう。
日本の文化と禅・仏教は切り離せないし、中国や朝鮮の文化とも切り離せない。
次に読んだ「現代アートを殺さないために」にも書かれているように、日本文化はいろんな国の文化を取り入れて、それをアレンジしてきたという経緯がある。
だから日本文化を学ぶのであれば、取り入れた先の文化も理解しないことには始まらない。
うむむ。
時間がいくらあっても足りませんな。
「現代アートを殺さないために」は、日本と世界を取り巻く「表現の自由」について書かれたもの。
日本では検閲は禁止されているが、それに近い行為はあるのかもしれないと、警鐘を鳴らしている本。
良くも悪くもパッと見ただけでは分かりづらいのが現代アート。
というのは、作品に込めたコンセプトを多義的に表現したものが現代アートだから。
それが傑作であればあるほど、多義性は深みを増していく。
だから、どうしてもパっと観ただけでは分かりづらい。
現代アートは観るものではなく「読むもの」と書かれていて、そっかー、だからわかりづらいんだなぁと納得したんでした。
ある一部分だけをみて、理解もせずに、これはだめ!と決めつけることはしない人間になりたい。
これは、本当に色んな人に読んでほしい本だった。
この本を読みながら、民主主義の良し悪しということを考えてしまった。
国民が自ら自分たちのトップを決める、ということになんの問題があるの?と思っていたけど、それはすべての国民が正しい判断をするときだけの話であって、国民がいつも正しい判断をするとは限らないし、正しい判断ができる情報が国民に与えられているとも限らない。
「日常の思想」にも民主主義の問題点を指摘している部分があった。
じゃあどうしたらいいの?って言われると、まぁわからないんですがね(あわわ)
こちらに詳しく書いてます。
「シン・ニホン」は、私が言うまでもなくベストセラーになっている本ですが、やっぱり読んでよかった。
日本がどれだけ『ヤバい』状況なのかというのを分析しつつ、今後の未来に繋げていくためにこういうことをしていこうよ〜と提案している本書。
この本を読んだ後、私個人ができることってなんだろう?って考えて、
1.選挙に行く
2.定年後も働けるように準備する
3.若い人を応援する
この3つかな、と思った。
1.選挙はやっぱり大切。
立候補者の公約をよく読んで、本当に日本の未来にとって良いと思う人に投票しないといけない、と当たり前のことを当たり前のように感じた。
そして周りの意見に振り回されるのもだめだ。
大衆の意見が必ずしも日本の未来にとっていいとは限らない。
(↑ これがほんとーにほんとーに大事なこと)
だから、大切なのは一人ひとり(特に若い人)が自分の頭で考えるということ。
まぁ、これができたら苦労しないんだけど。
2.定年後も働けるようにする
現状、日本の予算配分が高齢者に偏っていることを考えると、現役世代の負担を軽くしてあげる努力をする必要がある。
なので、定年退職ということにとらわれずに、働けるうちは働こうよ、というのが本書の提案。
まぁ確かにごもっとも。
仕事って本来は生きがいであるはずなのに、今の私にとっては苦痛になってしまっているので、そこの改善から考えていきたい。
3.若い人を応援する
優れたイノベーションや発明は、若い人(20代〜30代前半くらい)が起こしていることが多いらしい。
だから、若い人の発想やアイデアは潰さないようにしていきたい。
あと、年をとっても新しいことに触れるようにしていきたい。
余談だけど、シン・ニホンのなかに日本の教育システムについて言及されている部分があって、それが先に読んだ「現代アートを殺さないために」の中に出てきた会田家の「檄」という作品とかなりリンクしていて、びっくりした。
「檄」という作品は、幟のような布に、文科省の教育方針へのいちゃもんが書かれている作品。
書かれている内容はこんなかんじ↓(一部抜粋)
文部科学省に物申す
もっと教師を増やせ。〜略〜 未来の資源に予算を回せ。教師を働かせすぎ。みんな死んだ目をしているぞ。〜略〜 もっとゆっくり弁当食わせろ。十分で食えって軍隊かよ。運動会が変。組体操やめろ。〜略〜 カバンが重い。早くタブレット一つにしろ。〜略〜 従順人間作る内申書というクソ制度。いつまで富国強兵殖産興業のノリなんだ。素直な組織人間作って国が勝てる時代はとっくに終わってる。
(「現代アートを殺さないために」P204 より)
シン・ニホンを読んだ方ならわかると思うんだけど、言い方が違うだけで、指摘している内容は「シン・ニホン」も「檄」も一緒だと思う。
シン・ニホンの出版は2020年。
この「檄」という作品は2015年のもの。
シン・ニホンが出版される5年も前に、アーティストが日本の教育システムに警鐘を鳴らしている。
現代アートが「炭鉱のカナリア」と呼ばれている理由がちょっとわかった気がした。
まとめ
現代アートだけじゃなくて、もう少し日本文化寄りの本も読んで行こうと思った5月の読書だった。
日本大好き!ということではなくて、自分のアイデンティティに大きく影響しているのが日本文化だと思うので、自分の国のことくらい理解したいな〜というのが大きい。
とにかく毎日が憂鬱なのを、どうにかしたくて読書しているところがあるんだけど、一向に解決の目処が立たない。